辞めてほしくない社員が離職を考える理由とは?社長が見直したい組織との関係

今日もご覧いただき、
ありがとうございます。

こんにちは。

実家ホテルの倒産を経験した
後継社長専門コンサルタントの大島康義です。

もし今、

・辞めてほしくない社員から、辞意を伝えられた
・引き止めたけれど、以前の関係には戻っていない
・優秀な社員ほど辞めていく理由が、どうしてもわからない

そんな状態なら、
今日の記事はきっと参考になると思います。

後継社長の方とお話ししていると、
このテーマで悩んでいる方は、
本当に多いと感じます。

そして、たいていの場合、
辞表を持ってくるのは、
いちばん辞めてほしくない人です。


目次

1. 「辞めてほしくない社員」が離職を考えるとき、会社で何が起きているのか

社員が辞めると困ると感じるほど、経営者が抱えているもの

「あの人に辞められたら困る」

そう感じたとき、
社長の中では何が起きているか。

困るのは、業務が回らないからです。

でも、それだけではありません。

その社員が抜けた瞬間、
自分がまだこの会社を
掌握できていないことが、
表に出てしまう。

後継社長にとって、
古参の優秀な社員は、
支えであると同時に、
自分の未熟さを映す鏡でもあります。

だから、言いたいことが言えなくなる。

気を遣う。
顔色を見る。

社長が社員の顔色を見はじめたとき、
その関係はもう、
対等ではなくなっています。

給料や待遇だけでは説明できない社員の「辞めたい」という気持ち

引き止めるとき、
多くの社長は条件の話をします。

給料を上げる。
役職をつける。
仕事の負担を減らす。

それで残る人もいます。

ただ、半年後に、
また同じ話になる。

人は、条件で会社を選んでいるようで、
実際には別のものを見ています。

ここで自分の時間を使う意味があるのか。
この人と一緒に、先へ進めるのか。

条件は、その答えを
少し先延ばしにするだけです。

後継社長と社員の間にある、見えない距離とは

古手の社員から見ると、
後継社長は「途中から来た人」に見えます。

能力の問題ではありません。
立場の見え方として、そうなりやすい。

社員の心の中に、
こんな呼び名が生まれることがあります。

「アトツギさん」。

正しいかどうかの話ではありません。

そう見えてしまう構造がある、
という話です。

その状態で、指示を出し、評価をする。

違和感が出るのは、むしろ自然です。

頭ではわかっている。
社長の指示だから従う。
でも、心が追いつかない。

抵抗は、露骨には出ません。

返事はする。でも動きが鈍い。
やる。でも腹が落ちていない。

そして、いちばん腹の落ちない人から、
静かに辞めていきます。


2. 優秀な社員ほど離職してしまう会社にある共通点

先代社長との関係が残り続ける組織で起こること

私の場合、先代は父でした。

社員にとって、私は長いあいだ、
「社長の息子」でした。

肩書きが変わっても、
その見え方は簡単には変わりません。

社長が代わっても、
社員の多くは、
まだ先代に雇われている感覚を持っています。

後継社長の指示には従う。

けれど、その人の成功のために
働いているわけではない。

しくみとして理解はしていても、
心では動いていない状態です。

優秀な社員ほど、
この二重構造に敏感です。

新しい方針が出る。
古い空気が、それを押し戻す。

その往復にいちばん消耗するのは、
いちばん真面目に考えている人です。

会社の主が、まだ移っていない。

辞めていくのは、
それを最初に感じ取った人かもしれません。

社長が正しいことを言っても、社員がついてこない理由

後継社長がよく陥る考えがあります。

「実績を出せば、社員はついてくる」

気持ちはわかります。
私も長く、そう思っていました。

ただ、現実は順番が逆になりやすい。

本当の実績は、
社員の協力があって、はじめて出ます。

実績が出れば、社員はついてくる。
実績を出すには、社員が先に協力してくれないといけない。

この矛盾を力で押し切ろうとすると、
短期的には動きます。

でも長期では歪みが出る。

現場は「従うけれど、ついてこない」。

提案が消える。
自発性が消える。

そして、社長が孤立します。

正しさは、人を動かしません。

正しさが人を動かすのは、
その前に関係がある場合だけです。

社員のモチベーションより先に、信頼関係を整える

評価制度を変える。
面談を増やす。
理念を掲げ直す。

どれも意味のあることです。

ただ、順番を間違えると効きません。

やせた土のまま、
種の品種だけを変えているようなものです。

私が使っている言葉に
「契り結び」があります。

重い儀式のことではありません。

社員一人ひとりと、
これからの関係の前提を
結び直すことです。

制度は、その後です。


3. 「辞めないでほしい」と引き止めるだけでは、組織は変わらない

社員を無理に引き止めることが逆効果になる理由

引き止めるとき、
社長はこう言います。

「君に辞められたら困る」

言われた社員には、
こう届きます。

「この人は、私がいないと困る人だ」

「あなたが必要だ」ではなく、
「私が困る」と伝わってしまう。

その瞬間、力関係が動きます。

残ったとしても、
その社員はもう、
社長を支える側には戻りにくい。

引き止めは、関係を延長するだけで、
関係を変えてはくれないのです。

一人ひとりの声を聴くことで、関係性は変わり始める

では、どうするか。

腰は低く、腹は決める。

「こんな私だけど、
協力してくれないかな。お願いします」

これは卑屈になることではありません。

協力を引き出すための、
強さの使い方です。

大事なのは、
お願いの中に芯を入れることです。

私ひとりでは限界がある。
会社を前に進めたい。
だから力を貸してほしい。

その代わり、あなたの声はちゃんと聞く。
押し付けはしない。
やりやすい形を一緒につくりたい。

これを、全員の前で一度言うのではなく、
一人ひとりと向き合って伝える。

面倒です。時間もかかります。

ただ、ここを飛ばした組織は、
どこかで必ず止まります。

「この社長を助けよう」と社員が思える関係をどうつくるか

ホテルの後継者だったころの私は、
わからないことを、
その場で聞きませんでした。

会議で首をかしげることもしない。

持ち帰って、
夜に一人で調べていました。

若い。経験がない。頼りない。

そう思われたくなかったのです。

いま思えば、
あれは社員を遠ざける行為でした。

人は、完璧に見える人を
助けようとは思いません。

助けが要らないように見えるからです。

社員が「この人を助けよう」と思うのは、
社長が本気で、
そして一人では足りないと、
正直に見せたときです。

強がりは、孤独を呼びます。

その孤独は、社員にも伝わります。

なぜでしょうか。

社員は、社長の言葉より、
社長の空気を見ているからです。


4. 離職を防ぐ先にある、社員と未来をつくれる会社

社員を「辞めさせない」から「一緒にやりたい」へ

離職防止を目的にすると、
経営は守りに入ります。

辞めさせないための施策。
辞めさせないための面談。
辞めさせないための待遇。

目的が「防ぐ」である限り、
会社は減点を避ける組織になります。

減点を避ける会社に、
優秀な人は残りません。

ここで、少し視点を上げてみます。

言葉に文法があるように、
組織にも文法があります。

誰が決めたわけでもないのに、
「うちではこうする」という規則が、
社員の判断を深いところで動かしている。

社員を動かしているのは、
社長の指示ではなく、
その文法のほうです。

人の思考を深いところで支配している
常識や思い込みのことを、
私は「コード」と呼んでいます。

そして、それを解体して
書き換えることを、
リ・コードと呼んでいます。

離職の場面で書き換えるべきコードは、
たいてい一つです。

「どうすれば辞めないか」ではなく、
「この人と、何をやりたいか」

問いが変わると、
同じ社員を前にしていても、
見える景色がまるで変わります。

制度より先に、
社長の中の前提が変わるのです。

会社が自分にとっても社員にとっても誇れる場所になる

人が残る会社には、
共通するものがあります。

社員が、この会社のことを
誰かに話せる状態にあることです。

家族に話せる。
友人に話せる。

「うちの会社、いま、こんなことをやろうとしてる」

そう言える会社から、人は抜けません。

そのためには、
社長の中に、憧れに向かう事業がいる。

数字の目標ではありません。

続きが見たくなる話のことです。

後継社長が自分の軸を持つと、組織の空気は変わり始める

後継社長学では、
事業軸・経営軸・人生軸という
三つの軸で考えます。

自分は何を成したいのか。
この会社で何を実現するのか。
それをどう動かすのか。

この三つが揃うと、
社長の言葉から迷いが消えます。

誰かの人生の延長としてではなく、
自分の人生として、
この会社を引き受ける感覚が育つからです。

社員は敏感です。

言葉の内容より先に、
言葉の芯を感じ取ります。

芯が通った社長のところには、
人が集まりはじめます。

不思議なもので、
そうなると「辞めさせない工夫」は、
だんだん要らなくなっていきます。


今日の話を、三つだけ整理しておきます。

・辞めてほしくない社員の離職は、待遇の問題として現れるが、原因は関係の前提にある
・実績を出せば認められる、という順番は逆になりやすい
・引き止めは関係を延長するだけで、関係そのものは変えられない

社員が辞めるとき、
社長は自分を責めがちです。

私も、そうでした。

ただ、多くの場合、
それはあなたの人柄の問題ではありません。

まだ結び直されていない前提が、
そこに残っているだけです。

前提は、書き換えられます。

そして前提が変わると、
昨日まで同じ場所にいた社員が、
違う顔を見せはじめます。

黙っていた人が、意見を言う。

言われる前に、動く。

その瞬間に立ち会ったとき、
経営は、面白くなります。

この記事を書いた人

哲学的思考と実績に裏打ちされた体系的独自コンサルティングを優秀な連携専門家とともに提供します。
幾多の事業承継・企業変革を成功に導く業界のパイオニア的存在です。

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