従業員の意識改革が難しいのはなぜ?社員を変える前に社長が見直したい組織の動かし方

今日もご覧いただき ありがとうございます。

こんにちは。

後継社長学提唱者の大島康義です。

私はかつて実家ホテルの倒産を経験し、 その時の学びと経験を 後継社長専門コンサルタントとして お伝えさせていただいております。

「従業員 意識改革 難しい」

この言葉で検索されて この記事にたどり着いた方もいるかもしれません。

実はこの悩み、 後継社長にはとても多いテーマです。

社員を集めて話をした。

研修も入れた。

評価制度も見直した。

それでも、反応が薄い。

反発されるわけではありません。

返事はある。

けれど、動きが鈍い。

そういう状態が続くと、 社長のほうが先に疲れていきます。

今日は、この「意識改革が難しい」という感覚を、 少し違う角度から整理してみたいと思います。

先にひとつだけ、言葉を置いておきます。

会社の中には、誰も決めていないのに全員が従っている前提があります。

私はそれをコードと呼び、 それを書き換えることをリ・コードと呼んでいます。

意識改革の話は、ほとんどがここに行き着きます。


目次

なぜ従業員の意識改革は思うように進まないのか

社員に「もっと主体的に動いてほしい」と願う社長の悩み

後継社長とのセッションで、 繰り返し出てくる言葉があります。

「社員が思うように動いてくれないんです」

これは創業社長も抱える悩みです。

特別なことではありません。

ただ、後継社長の場合は、 もう一段やりにくい構造が乗っています。

指示は通ります。

反発も、表向きには出ません。

でも、返事のあとに、わずかな間がある。

やってはくれる。

けれど、腹が落ちていない。

変えようとすればするほど、 無言の抵抗が増えていく。

会社のスピードが、静かに落ちていく。

多くの後継社長が、 この感触を言葉にできないまま抱えています。

言えないのは、口にした瞬間に 自分の器の問題になってしまう気がするからです。

研修やルールを増やしても社員が変わらない理由

こういうとき、打ち手は似た方向に向かいます。

・研修を入れる ・評価制度を見直す ・朝礼で理念を唱和する ・行動指針をつくる

どれも、悪い施策ではありません。

ただ、これらが効くのは、 「一緒にやろう」という前提が先に揃っているときです。

前提が揃っていないところに制度を足すと、 社員から見れば、管理が増えただけに見えます。

やることが増えた。

チェックが増えた。

でも、なぜやるのかは腹に落ちていない。

制度は、行動を規定することはできます。

けれど、前提までは書き換えられません。

意識改革が難しいと感じるのは、 社長の努力が足りないからではないのです。

打ち手の質ではなく、打ち手を入れる順番の問題です。

意識の問題に見えて、実は組織の構造に原因がある

ここが、今日いちばんお伝えしたいところです。

社員の反応が鈍いのは、 社員の意識が低いからではありません。

社員の中にある前提が、 まだ切り替わっていないからです。

社員から見ると、 後継社長は「途中から来た人」に見えやすい。

能力の問題ではなく、 立場の見え方として、そうなりやすいのです。

頭ではわかっています。

「社長の指示だから従わないといけない」。

でも、心が追いつかない。

その状態で、新しい社長が指示を出し、評価をする。

社員側に違和感が出るのは、むしろ自然です。

これは意識の問題ではなく、構造の問題なのです。

構造の話にすると、少し息がしやすくなります。

自分の人格が足りないのではなく、 まだ結び直していない関係が残っているだけだからです。


社員を変えようとするほど、組織が動かなくなることがある

「社員の意識が低い」という見方が生み出す悪循環

社長が「うちの社員は意識が低い」と思った瞬間から、 組織はゆっくり動かなくなります。

人は、自分がどう見られているかを、驚くほど正確に感じ取ります。

言葉にしなくても伝わる。

そして、そう見られている側は、 そう見られている通りに振る舞い始めます。

意識が低いと思われている人は、提案を出さなくなります。

出しても否定されると学習するからです。

提案が減ると、社長はさらに確信します。

「やっぱり、うちの社員は受け身だ」

こうして循環が閉じていきます。

誰も悪意を持っていないのに、 関係だけが固まっていく。

これが、いちばん静かで、いちばん厄介な停滞です。

先代から続く会社の当たり前が社員の行動を決めている

先日、一通のメールを受け取りました。

かれこれ22年も前の、 ホテルの後継者時代に社員だった方からでした。

懐かしくもあり、 同時に、未熟だった自分を思い出して、 少し苦いような気持ちにもなりました。

あの頃の私は、 社員に認めてもらうには、結果を出すしかないと思っていました。

実績を積めば、見る目が変わるはずだ、と。

でも今から振り返ると、 私は社員から「跡取りの息子」として見られていたのだと思います。

会社には、長い時間をかけて出来上がった当たり前があります。

こういうときは、こう決める。

これは社長に上げる。

これは上げなくていい。

誰も明文化していないのに、全員が知っている。

これは、先代の判断のクセが、 組織の習慣として堆積したものです。

父の代から働いてきた社員ほど、 その当たり前の中で仕事を覚えています。

だから、後継社長が新しいことを言っても、 古い当たり前のほうが強く働きます。

社員の心の中では、まだ「先代の会社」のままなのです。

当たり前って、強いんですよね。

味方の顔をして、可能性を静かに削っていく。

そして、社員の中には、こんな呼び名が生まれることがあります。

「アトツギさん」。

この言葉が正しいかどうかではありません。

そう見えてしまう構造がある、という話です。

【リ・コードの一例】

コード:社員の意識が低いから、会社が変わらない

↓

リ・コード:前提がまだ結び直されていないから、会社が動かない

後継社長と社員の間に信頼関係がなければ改革は進まない

ここで、多くの後継社長が同じ場所でつまずきます。

「実績を出せば、社員はついてくるはずだ」

かつての私も、まったく同じでした。

気持ちはよくわかります。

実績があれば、評価される。

信頼される。

聞いてもらえる。

ところが、現実は順番が逆になりやすい。

本当の実績は、社員の協力があってはじめて出ます。

つまり、こういう矛盾が起きます。

・実績が出れば、社員はついてくる(と思っている) ・でも、実績を出すには、社員の協力が先に要る(現実)

この矛盾を力でねじ伏せようとすると、 短期的には動きます。

でも、長期では歪みが残ります。

現場は、従うけれどついてこない。

提案が消え、自発性が消える。

最後には、社長が孤立します。

【リ・コードの一例】

コード:実績を出して、社員を黙らせる

↓

リ・コード:実績の前に、お願いで協力を取りにいく


従業員の意識改革ではなく、社長と組織の関係を変えていく

社員を動かす前に、社長自身の言葉と判断軸を明確にする

長く後継社長を支援してきて、 ずっと解消されない疑問がありました。

本気で考え、まじめに努力し、経営計画書までつくっている。

それなのに、なぜ言葉が届かないのか。

計画はある。

目標もある。

数字もある。

会議もしている。

それでも、社員の反応がどこか薄い。

ようやく辿り着いた答えは、こうでした。

後継社長の言葉が、 「何をするか」にはなっていても、 「何者として立つのか」にはなっていない。

そもそも組織というものは、 トップが判断し、責任を引き受けることで成り立っています。

トップがいなければ、誰も決断せず、誰も責任を取らない。

組織は烏合の衆になってしまいます。

戦国の世でも同じでした。

大名が倒れたとき、 代わりに指揮を執る者がいなければ、家臣は離れていきます。

人は、方針や目標だけでは、 自分の人生や仕事を本気では預けません。

この人は何を信じているのか。

何を大事にして判断する人なのか。

苦しくなったとき、何を残し、何を捨てるのか。

そこが見えて、はじめて腹が動きます。

指示は届いても、信は届いていない。

だから私は、後継事業家ステートメントという文書を勧めています。

会社の歴史をどう受け取るのか。

自分は何を返していきたいのか。

これからどんな景色をつくりたいのか。

それを自分の言葉にすると、判断が速くなり、迷いが減ります。

社員を動かす前に、社長の芯が先に立つのです。

指示するだけではなく、対話と共感から信頼を築く

そのうえで、私が最初にお願いしているのが「契り結び」です。

重い儀式ではありません。

社員一人ひとりと、 これからの関係の前提を結び直す行為です。

骨格だけ書きます。

・感謝を伝える ・考えや悩みを聴く ・社長になった経緯を短く伝える ・「協力していただけますか?」と尋ねる ・反応を見て、さらに聴く ・対話を往復する ・「協力します」に「ありがとうございます」と返す

とくに重要なのは、四つ目です。

「協力してください」と押し付けるのではなく、 問いとして投げる。

そして反応を受けて、もう一度聴く。

この順番があるだけで、場の空気が変わります。

契り結びは、社員を丸め込む技術ではありません。

社長が最後の責任者として、前提を整え直す行為です。

姿勢は低く、腹は決める。

これは卑屈になることではありません。

協力を引き出すための、強さの使い方です。

パートの方も含めて、全員と、淡々とやり切る。

派手さはありませんが、ここが土台になります。

「自分の会社」と感じられる環境を少しずつつくる

契り結びをしたからといって、 急に仲良くなるわけではありません。

でも、会社が前に進むための前提が揃い始めます。

・様子見から、参加へ ・牽制から、協力へ ・言われたからやる、から、一緒にやる、へ

すると、現場ではこんな変化が起きます。

・報連相が戻る(悪い情報ほど早く上がる) ・決めたことが進む(途中で止まりにくくなる) ・提案が出る(小さな改善が連鎖する)

結果として、社長の言葉が 「社長の言葉」として通り始めます。

責任だけを背負う社長から、 責任と意思決定が一致した社長へ。

社員にとっても、会社が 「働かされる場所」から「自分がいる場所」に変わっていきます。

意識が変わったから行動が変わったのではありません。

前提が変わったから、行動が変わったのです。


社員が自ら動き出す会社へ変わるために、後継社長ができること

会社の未来を社員と語り、共に進む方向をつくる

社員が自ら動き出すのは、 指示が上手くなったときではありません。

この会社がどこへ向かうのかが見えたときです。

守るための会社は、守るだけの動きしか生みません。

けれど、向かう先があると、人は前に出ます。

何人もの後継社長から、似た言葉を聞いてきました。

「会社は回っているんです」

「大きな問題もないんです」

「でも、なぜかおもしろくないんです」

そういう時期を通ってきた人は、少なくありません。

そこから抜けていった方に共通しているのは、 「親の事業を守る」という感覚から、 「自分はこの会社で、どんな景色を見たいのか」 という問いに移っていったことです。

もともと壮大な夢があったわけではありません。

むしろ逆です。

目の前の仕事を自分の意思で引き受け直したからこそ、 その先に、憧れに向かう事業が見えてきたのです。

そして不思議なことに、社長の火は、社員に伝わります。

社員を変えるのではなく、社員が力を発揮できる場をつくる

意識改革という言葉には、 どこかで相手を変えようとする響きがあります。

でも、人の意識を外から変えることはできません。

できるのは、環境を整えることだけです。

・悪い情報を上げても叱られない ・決めたことが途中で止まらない ・提案が形になる場面がある

このあたりが揃ってくると、人は自然に前に出ます。

社員が動かないのではなく、 動いても報われない構造だった、ということが少なくありません。

社長がやるべきなのは、社員を叱咤することではありません。

社員が力を出しても損をしない場を、静かに整えることです。

叱咤は一瞬で効きます。

環境は、時間がかかります。

けれど、残るのは後者のほうです。

意識改革の先に「会社が自分の舞台になる」感覚を育てる

前提が変わると、判断が変わります。

判断が変わると、会議の空気が変わります。

空気が変わると、数字が動き始めます。

これは、順番があるということです。

制度や組織図からではなく、 社長の中にある前提から変わっていく。

そして、その変化はやがて社員にも移っていきます。

会社が、こなす場所から、 自分の力を試す舞台に変わっていく。

社員との関係が整ってきた会社を、私は何度も見てきました。

会議の空気がやわらいだ会社もありました。

指示しなくても動きが出てきた現場もありました。

それは、特別な人にだけ起きたことではありません。

悩み、迷い、立ち止まりながらも、 自分の前提を見直した人たちに起きてきた変化です。


今日の内容を、短く整理します。

・従業員の意識改革が難しいのは、社員の意識が低いからではない ・社員の中の前提(コード)が、まだ切り替わっていない ・制度や研修は行動を規定できるが、前提までは書き換えられない ・実績が先ではなく、協力が先 ・社長の言葉と判断軸が立つと、関係が動き始める

会社の当たり前は、誰かの怠慢でできたものではありません。

その時代を、その人たちが必死に生き抜いた結果です。

だから、否定する必要はありません。

ただ、いま引き受けているのは、あなたです。

あなたの会社の当たり前は、誰がつくったものでしょうか。

そこを一度眺めてみるだけで、 見慣れた景色の輪郭が、少し変わって見えることがあります。

社員を変えようとするのをやめたとき、 会社のほうが先に動き出す。

私が現場で見てきたのは、たいていこの順番でした。

そしてその先で、 会社が、あなた自身の舞台に変わっていきます。

この記事を書いた人

哲学的思考と実績に裏打ちされた体系的独自コンサルティングを優秀な連携専門家とともに提供します。
幾多の事業承継・企業変革を成功に導く業界のパイオニア的存在です。

目次