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こんにちは。
実家ホテルの倒産を経験した 後継社長専門コンサルタントの大島康義です。
もし今、
・大事な判断を、誰にも相談できないまま抱えている
・社員にも家族にも、本音を話せる相手がいない
・このまま一人で決め続けるのかと感じている
そんな状態なら、 今日の記事はきっと参考になると思います。
後継社長の方とお話ししていると、 このテーマで悩んでいる方は、 本当に多いと感じます。
社長に相談相手がいないと感じるのは、あなただけではない

ある後継社長から、こんな言葉を聞きました。
「会社は回っているんです。 大きな問題もないんです。 でも、この話ができる相手が、 一人もいないんです」
業績は悪くない。 社員も辞めていない。
外から見れば、順調な会社です。
それでも、話す相手がいない。
この方が特別なわけではありません。
2004年に活動を始めてから、 300社を超える後継社長と関わってきました。
同じ言葉を、何度も聞いています。
経営の悩みを社員には話せない理由
社員に相談できない理由は、はっきりしています。
社長の不安は、 そのまま会社の不安になるからです。
「来期の資金繰り、正直きついんだ」
そう漏らした瞬間、 場の空気が変わる。
社員は敏感です。
社長の迷いを、 言葉より先に察知します。
だから、飲み込む。
会議では平然と方針を語り、 帰りの車の中で、一人で考え直す。
弱音を吐かないのではありません。
吐けない場所に立っている、 というだけのことです。
家族や先代にも本音を相談できない苦しさ
では家族なら話せるかというと、 これも難しい。
配偶者に打ち明ければ、 生活の不安まで背負わせることになる。
先代に相談すれば、 「だから言っただろう」が返ってくるかもしれない。
あるいは心配のあまり口を出され、 せっかく動かしかけた話が止まる。
社外の知人に話しても、
「でも、継がせてもらったんでしょう」
その一言で、言葉が続かなくなる。
悩みが理解されないのではありません。
悩みの前提が、 共有されていないのです。
社長になった途端、誰にも弱音を吐けなくなるわけ
私自身の話をします。
27歳のとき、阪神大震災で 家業であるホテルが壊滅しました。
父は気力を失い、
「あとはお前に任せる…」
そう言って、業務を諦めてしまいました。
蓋を開けてみたら、 100億円を超える借金。 50億円の債務超過。
従業員400名の生活が、 突然、私の肩にのしかかりました。
あの頃、私の周囲には、 親身に話を聴いてくれる人はいませんでした。
的確な助言をくれる人も、 指針になるような人もいなかった。
たった一人で暗闇を全速力で走らなければ、 すぐ後ろから走ってくる 「倒産の現実」から逃れられない。
そんな日々でした。
ただ、いま振り返って思うのは、 孤独がつらかった、という話ではないのです。
孤独になると、判断が鈍る。
一人で考え続ける思考は、 窓のない部屋のようなものです。
空気が入れ替わらない。
昨日と同じ結論に、今日もたどり着く。
会社が動かないのは、 社長の能力が足りないからではなく、 思考が閉じているからだった。
そういうことが、実際にあります。
なぜ社長は「相談できる相手」が見つからないのか

経営判断の責任を最後に引き受けるのは自分
相談相手が見つからない理由の根っこには、 責任の構造があります。
助言はもらえます。 情報も手に入ります。
けれど、最終的に判を押すのは社長です。
税理士は数字の見立てをくれる。 弁護士は法律のリスクを教えてくれる。 コンサルタントは選択肢を並べてくれる。
どれも、ありがたいものです。
ただ、
「その決断で、社員の生活が変わる」
この重さだけは、誰も代わりに持てません。
だから、どれだけ人に囲まれていても、 決める瞬間だけは一人になる。
これは、なくなりません。
会社の内部事情を知る人ほど相談しにくくなる
もうひとつ、やっかいな構造があります。
会社のことをよく知っている人ほど、 利害の中にいる、ということです。
幹部社員には、自分の部署の立場がある。 先代には、築いたものへの思いがある。 金融機関には、貸し手の立場がある。 家族には、生活がかかっている。
会社を知っている人は、 必ず何かの当事者です。
一方、利害の外にいる人は、 会社の事情を知らない。
だから、話しても通じない。
知っている人には話しにくく、 話せる人は知らない。
相談相手が見つからないのは、 探し方が足りないからではありません。
そういう構造の中に、 社長という椅子が置かれているのです。
後継社長ほど先代や古参社員との関係に悩みやすい
後継社長の場合、 ここにもう一段の重さが加わります。
肩書きは社長。
けれど、実質の主導権は、 まだ移っていない。
株式は先代が持っている。 経理は古参の役員が握っている。 現場は、前の社長のやり方で動いている。
「社長なのに、裁量がない」
「社長なのに、決めているようで決めていない」
この感覚を、人に説明するのは難しい。
説明したところで、
「社長なんだから、決めればいいじゃないですか」
と返ってくる。
その一言が、いちばんこたえます。
後継社長にとって本当に難しいのは、 経営の知識が足りないことではありません。
自分が何を当たり前だと思い込んでいるのかが、 自分では見えにくいことです。
先代の価値観。 家族の空気。 社員との長年の関係。 業界の常識。
その内側に立ったまま、 判断を続けている。
当たり前って、強いんですよね。
味方の顔をして、 可能性を静かに削っていく。
相談相手を探す前に、社長自身の「経営の軸」をつくる

誰かの正解を聞くだけでは経営の迷いは消えない
相談相手が欲しい、という思いの奥には、 たいてい「答えが欲しい」という気持ちがあります。
私も、そうでした。
リーダーシップの本を読み、 研修にも通いました。
社員より頑張らなければならない。 社員より優秀でなければならない。 的確な指示を出さなければならない。
そう思って、必死でした。
結果は、空回りです。
社員から見れば、 「空回りしている残念な人」 だったと思います。
いま振り返れば、 借り物の答えを自分に着せていただけでした。
答えは増えるのに、迷いは減らない。
なぜでしょうか。
判断の基準が、 自分の中にないからです。
基準のないまま助言を集めると、 助言の数だけ迷いが増えていきます。
事業・経営・人生の3つの軸から自分を見直す
私は、後継社長には 三つの軸があると考えています。
事業軸。 経営軸。 人生軸。
最初からこう整理できていたわけではありません。
うまくいく方と、 そうでない方を見続けるうちに、 共通して抜け落ちているものがある、 と気づいた。
それが人生軸でした。
事業軸は、何で世の中に価値を届けるのか。 経営軸は、どんな組織と数字でそれを支えるのか。 人生軸は、自分はこの人生をどう使いたいのか。
多くの後継社長は、 事業軸と経営軸だけで考えようとします。
人生軸が抜けたまま、 会社の話を積み上げていく。
すると、 正しいけれど熱のない計画ができあがる。
自分が心から望んでいない目標に、 人は本気で向かえません。
社員がついてこないと感じるとき、 原因が社員の側ではなく、 この抜けた一本の軸にあることは、 決して少なくないのです。
「自分はこの会社をどうしたいのか」を言葉にする
三つの軸を通す作業は、 難しい理論ではありません。
「自分はこの会社をどうしたいのか」
これを、自分の言葉で書いてみることです。
先代の言葉でもなく、 業界の常識でもなく、 コンサルタントの用語でもなく。
やってみると、 たいてい最初は書けません。
書けない、と気づくところが出発点です。
私はこの作業を、リ・コードと呼んでいます。
長い時間をかけて自分の中に入り込んだ 古いコードを、いったん解体する。
そして、新しいコードに書き換えていく。
継ぐ、という意識を卒業し、 自分の憧れを形にしていく。
そのとき、後継社長は 後継事業家に変わっていきます。
社長が一人で抱え込む状態から、自分らしく会社を動かす未来へ

本音を話せる相手がいることで判断の質が変わる
軸ができると、 相談の意味そのものが変わります。
答えをもらう相談から、 自分の前提を確かめる相談へ。
必要なのは、 正解を押しつけてくる人ではありません。
「それは本当に、あなたの意思ですか」
「守ろうとしているのは会社ですか。 それとも、誰かの期待ですか」
そう問い返してくれる存在です。
利害の外にいて、 迎合せず、 見捨てずに見てくれる人。
その人は、答えを持っていなくてかまいません。
問いを返してもらうだけで、 社長の判断には、静かな芯が通っていきます。
社員との信頼関係ができると会社は動かしやすくなる
私が変わったきっかけは、 ある先輩経営者の言葉でした。
沖縄での経営合宿の夜。
初対面のその人は、 私にこう言いました。
「おい、バカ息子。 お前は自分の力で 今の地位を勝ち取ったんじゃないだろう」
不躾な人だな、と思いました。
けれど、続きがありました。
「お客様に、来てよかったと 思ってもらいたいのか。
社員に、働いててよかったと 思ってもらいたいのか。
それなら、それを社員に伝えろ。
そのうえで、自分は一人では何もできないから 協力してほしいと頭を下げろ」
その言葉は、 すぐにはピンときませんでした。
それでも、何をしても孤立していた私は、 初めての経営計画発表会で、 幹部社員の前でそれを言ってみたのです。
鎧を脱いだ、という感覚でした。
そこから、社員との関係が 少しずつ変わり始めました。
強い社長を演じているうちは、 誰も本当のことを言ってくれません。
生身で立った社長のところに、 ようやく情報が集まってくる。
孤独が薄まるのは、 外に相談相手を見つけたときではなく、 自分が鎧を脱いだときなのかもしれません。
「相談する社長」から「自分の意思で決める社長」へ
相談相手がいないという悩みは、 相談相手ができれば消える、 というものではありません。
軸のないまま相談相手を増やせば、 迷いが増えるだけです。
順番があります。
自分の軸を、自分の言葉にする。
その軸を、外の視点で照らしてもらう。
そのうえで、自分で決める。
決めるのは、やはり一人です。
けれど、軸のある一人は、 孤独とは違うものになります。
まとめ|孤独は消えない。けれど、質は変わる

今日お伝えしたことを、 簡単に整理しておきます。
・社長に相談相手がいないのは、探し方の問題ではなく構造の問題である ・会社を知る人は利害の中にいて、利害の外の人は会社を知らない ・後継社長には、そこに先代や古参社員との関係が重なる ・相談相手を探す前に、事業軸・経営軸・人生軸を通す ・軸ができると、相談は「答えをもらう場」から「前提を確かめる場」に変わる
孤独そのものは、なくなりません。
社長という立場は、 最終的に一人で決める立場だからです。
古来、決める者はいつも孤独でした。
国を預かった者も、 軍を率いた者も、 家業を継いだ者も。
孤独は、 その椅子に付いてくる影のようなものです。
ただ、同じ孤独でも、 質はまったく違ってきます。
誰にも話せずに閉じていく孤独と、 自分の意思で立っている静かな一人。
その違いは、 能力ではなく、 軸があるかどうかで決まります。
論語に、こういう言葉があります。
「徳は孤ならず、必ず隣有り」
自分の軸に沿って立っている人のところには、 不思議と人が集まってくる、 という意味だと私は受け取っています。
あなたはどう感じますか。
もし今、 誰にも話せないまま抱えているものがあるなら、 それは弱さの証ではありません。
まだ言葉になっていない何かを、 本気で持っているということでもあります。
その何かが言葉になったとき、 会社は、少し違う動き方を始めます。



