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ありがとうございます。
こんにちは。
実家ホテルの倒産を経験した
後継社長専門コンサルタントの大島康義です。
もし今、
・社長になった途端、社員が遠くなった気がする
・古参社員が、どこか様子を見ている
・言っていることは正しいはずなのに、動いてくれない
そんな状態なら、
今日の記事はきっと参考になると思います。
先に一つだけお伝えしておきます。
社員の反応が変わったのは、
あなたの人望の問題ではありません。
構造の問題です。
社長交代で社員の反応が分かれるのはなぜか

「新しい社長」に社員が期待すること、不安に感じること
社長が代わる時期、現場の空気が揺れるのは、ごく自然なことです。
期待と不安が、同時に立ち上がります。
期待のほうは、こういうものです。
・風通しが良くなるかもしれない
・新しいことに挑戦できるかもしれない
・古い慣習が変わるかもしれない
不安のほうは、こうです。
・方針はどう変わるのか
・自分の仕事はどうなるのか
・これまでの評価はどう扱われるのか
不安になるのは、それだけ会社を大切に思っているからでもあります。
会社のこれからを、他人事ではなく自分事として感じているから、揺れるのです。
社員の反応が分かれるのは、性格の違いではありません。
その人が、これまで会社に何を預けてきたのかの違いです。
長く勤めた人ほど、預けてきたものが多い。
だから、揺れも大きくなります。
先代社長との関係が社員の態度に影響する理由
社員は、会社と雇用契約を結んでいます。
しかしそれとは別に、社長個人とのあいだに「心の契約」のようなものを結んでいます。
そしてその契約は、たいてい先代とのあいだで結ばれています。
苦しい時期を一緒に越えた。 自分を拾ってくれた。 子どもの学費を出せたのは、あの会社があったからだ。
そういう時間の積み重ねが、態度の土台になっています。
だから、新社長に冷たいのではありません。
まだ、結び直されていないだけなのです。
ここを取り違えると、「あの人は自分を認めていない」という個人的な話に見えてしまいます。
けれど実際には、誰も裏切ってはいません。
契約の相手が、まだ書き換わっていないだけです。
社長が代わっても会社の空気が変わらない本当の理由
肩書は、一日で変わります。
登記も、名刺も、朝礼の立ち位置も変わります。
でも、前提は変わりません。
後継社長学では、人の思考を深いところで支配している常識や思い込みを「コード」と呼んでいます。
社長交代の場面で残りやすいコードは、こういうものです。
・この会社は、やはり先代の会社だ
・最終的には先代が決めるのだろう
・新社長は、まだ様子を見る対象だ
円柱を思い浮かべてみてください。
横から見れば長方形、真上から見れば丸。
どちらも間違いではありません。
けれど、その断面だけを真実だと信じている限り、円柱という立体は見えてきません。
制度は書き換えられます。
でも、人の中にある意味づけは、書類では書き換わらないのです。
空気をつくっているのは、人ではなくコードだからです。
社長交代後に社員が動かなくなる構造を理解する

古参社員が新社長に距離を置くのはなぜか
社員から見れば、後継社長は「途中から来た人」に見えやすいものです。
頭では社長とわかっていても、心の前提が切り替わっていない状態が起きます。
こんな場面があります。
朝礼で、新しい方針を話す。
社員は聞いている。
返事もある。
けれど、視線が上がってこない。
誰かが最初に顔を上げるのを、全員が待っているような空気がある。
露骨な反発ではありません。
やるけれど、腹が落ちていない。
そこにあるのは、無意識のうちに後継社長を「試す空気」です。
少し様子を見る。 前の社長と比べる。 本当に任せて大丈夫なのかを、つい測ってしまう。
これも、人として自然な反応です。
ただ、その空気が強くなりすぎると、後継社長は自分の足で立ちにくくなります。
人は、ずっと値踏みされていると、失敗の少ない判断を選びたくなるからです。
すると決断は小さくなり、挑戦は減り、会社全体が守りに入っていきます。
これは、能力の問題ではありません。
構造の問題です。
社員との信頼関係ができる前に改革を急いではいけない理由
就任直後ほど、早く結果を出したくなります。
「実績を出せば、社員はついてくる」
多くの後継社長が、そう考えます。
私もそう思っていました。
でも、ここに落とし穴があります。
実績は、社員の協力があってはじめて出るものだからです。
つまり順番は、「実績→信頼→協力」ではありません。
「協力→実績→信頼」です。
力でねじ伏せれば、短期では動きます。
けれど長期で見ると歪みが残り、現場はいやいや従うけれどついてこない状態になります。
提案が消え、主体性が消え、やがて社長が孤立します。
改革そのものが悪いのではありません。
協力を得る前に改革だけを走らせると、改革が「敵の合図」として受け取られてしまうのです。
「社長になったのに動かせない」と感じる後継者の共通点
相談を受けていて、共通していると感じることがあります。
正しさで動かそうとしている、ということです。
数字は揃っている。 計画も筋が通っている。 言っていることは、どこも間違っていない。
それでも、乗ってこない。
指示は届いても、信は届いていない。
私自身、27歳のときにそうでした。
阪神大震災で家業のホテルが壊滅し、父は気力を失い、「あとはお前に任せる」と業務を諦めてしまいました。
蓋を開けてみたら、100億円を超える借金。
50億円の債務超過。
従業員400名の生活が、突然、私の肩にのしかかりました。
私は必死に手を打ちました。
数字を並べ、方針を掲げ、朝礼で何度も語りました。
正しいことをしているつもりでした。
けれど、話し終えた後の会議室は、いつも少しだけ静かでした。
誰も反対しない。
誰も何も言わない。
当時の私は「なぜわかってもらえないのか」と思っていました。
いまならわかります。
関係の前提を結び直すという作業を、まるごと飛ばしていたのです。
後継社長が社員の反応を変えるために見直したいこと

社員を変えようとする前に自分の立ち位置を見直す
社員を変えることは、簡単ではありません。
変えられるのは、自分の立ち位置です。
ここで一つ、リ・コードをしてみてください。
リ・コードとは、もう合わなくなった古いコードを見抜き、いまの立場に合うコードへ差し替えることです。
コード:社長になったのだから、社員は従うはずだ リ・コード:肩書は渡された。信は、これから結ぶ
この置き換えをした後継社長は、動きが変わります。
私が現場でお勧めしているのが「契り結び」です。
重い儀式ではありません。
社員一人ひとりと、これからの関係の前提を結び直す行為です。
・感謝を伝える
・考えや悩みを聴く
・社長になった経緯を短く伝える
・「協力していただけますか?」と尋ねる
・反応を受けて、もう一度聴く
ある後継社長は、最初の一人に、いちばん距離のある古参の工場長を選びました。
会議室で向かい合い、感謝を伝えたところで、相手は黙ったままだったそうです。
沈黙が続きました。
気まずくて、途中で話を切り上げたくなった。
それでも、最後に「協力していただけますか」と尋ねた。
工場長は、しばらく間を置いて、「まあ、やれることはやりますわ」とだけ言ったそうです。
劇的な言葉ではありません。
でもその翌週から、工場長が現場の情報を先に持ってくるようになった。
とくに大切なのは、最後を問いとして投げることです。
「協力してください」と押し付けるのではなく、「協力していただけますか」と尋ねる。
この一語の違いで、場の空気が変わります。
自分の言葉で会社の未来を語ることで組織の見方が変わる
経営計画書は「何をするか」を示す文書です。
売上、利益、投資、施策、期限。
もちろん、なくてはならないものです。
けれど、そこに書かれにくいものがあります。
この会社をどういう思いで引き受けるのか。 何を守り、何を変えたいのか。 苦しくなったとき、何を残し、何を捨てるのか。
つまり、後継社長の核です。
人は、方針や目標だけでは、自分の人生や仕事を本気で預けません。
「この人は何を信じているのか」
そこが見えて、はじめて腹が動きます。
私はこれを言葉にしたものを「後継事業家ステートメント」と呼んでいます。
完璧な言葉である必要はありません。
むしろ、矛盾や弱さを抱えたまま立っている気配のほうが、人を動かします。
支配ではなく信頼によって社員を味方にしていく
支配は、速いけれど浅い。
信頼は、遅いけれど深い。
姿勢は低く、腹は決める。
「こんな私だけれど、力を貸してほしい」
これは弱さではありません。
協力を引き出すための、強さの使い方です。
ただし、お願いには芯が必要です。
・みんなのために会社を良くしたいこと ・社長ひとりでは限界があること ・社員の声を聞き、押しつけないこと ・一緒にやりやすい形をつくること
芯のないお願いは、ただの迎合になります。
芯のあるお願いは、関係の前提を結び直します。
冒頭の後継社長の話に戻ります。
「悪くなったわけじゃない。でも、遠くなった」
そう言っていた方は、半年ほどかけて、社員一人ひとりと向き合いました。
先日お会いしたとき、こんなことを言われました。
「距離は、まだあります。
でも、遠さの種類が変わりました」
近づいたとは言わない。
そこが、この方らしいと思いました。
社長交代を「会社を自分の舞台に変える」転機にする

先代から受け継いだ会社を自分の意思で動かせる状態へ
社長交代でよく起きるのが、責任だけが先に移り、決裁がまだ移っていない状態です。
決めても支払いが止まる。 確認が増えてスピードが鈍る。 取引先に信用不安が生まれる。
社員は、この状態を敏感に読み取ります。
「この人に言っても、結局決まらない」
そう思われた瞬間、話は先代のところへ流れていきます。
責任と決裁を一致させること。
それは相手を疑うためではなく、最後の責任を引き受ける形を整えるためです。
ここが揃うと、社長の言葉は「提案」から「決定」に変わります。
社員と未来を語れる社長になることで組織が変わり始める
契り結びをしたからといって、急に仲良くなるわけではありません。
でも、会社が前に進む前提が揃い始めます。
・様子見が、参加に変わる
・牽制が、協力に変わる
・言われたからやるが、一緒にやるに変わる
すると、現場ではこうなります。
報連相が戻る。
決めたことが止まらない。
提案が増える。
社員の反応が変わったのではありません。
前提が変わったから、反応が変わったのです。
「二代目」から、自分の理想を実現する事業家へ
多くの後継社長は、自分の職業を「経営者」だと答えます。
一般的にはそう説明されますし、世間のコードもそうなっています。
ただ、このコードこそが、後継社長の動きを小さくしていることが少なくありません。
「経営者」を出発点にすると、「潰すな」というプレッシャーが先に立つからです。
創業社長は、最初から経営者として動き出すわけではありません。
組織がない状態から、「どんな事業をしたいか」を考えるところから始まります。
つまり創業社長の本質は、事業家です。
後継社長も、同じ場所に立つことができます。
コード:後継社長は経営者である リ・コード:後継社長は事業家である
守るのではなく、活かす。
そう捉え直したとき、語る言葉が変わります。
社員が本当に反応しているのは、肩書ではありません。
その人がどこへ向かおうとしているか、です。
社長交代で社員の反応が変わるのは、社員の心が離れたからではありません。
・心の契約が、まだ先代と結ばれたままだから
・肩書は移っても、コードが移っていないから
・協力より先に、実績を取りにいこうとしているから
構造が、そうなっているだけです。
だとすれば、打ち手は「社員をどう動かすか」ではなくなります。
自分の立ち位置を見直す。
関係の前提を結び直す。
自分の言葉で、向かう先を語る。
その日は、たぶん劇的には訪れません。
会議室の空気が急に変わることも、社員が突然目を輝かせることも、まずありません。
ある朝、誰かが先に口を開くだけです。
「社長、あれなんですけど」
その一言が出たとき、会社はもう、あなたの舞台になっています。



