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こんにちは。
実家ホテルの倒産を経験した
後継社長専門コンサルタントの大島康義です。
「古参社員 辞めさせる 方法」
この言葉で検索されて
この記事にたどり着いた方もいるかもしれません。
実はこの悩み、
後継社長にはとても多いテーマです。
古参社員を辞めさせたいと思うほど、社長が追い詰められる理由

相談に来られた後継社長が、 ぽつりとこう言うことがあります。
「あの人さえ、いなくなってくれたら」
その言葉を口にした後、 たいてい少し気まずそうな顔をされます。
社長がそんなことを考えてはいけない。 そう思っておられるのでしょう。
でも、そこまで思い詰めるには 理由があります。
自分が社長なのに会社を思うように動かせない苦しさ
社長になれば、 手続き上、社員に指示命令はできます。
でも、本気でその指示に従ってくれるかどうかは 別の問題です。
抵抗は、露骨には出ません。
返事はする。でも動きが鈍い。 やる。でも腹が落ちていない。
変革をかけようとするほど、 無言の抵抗が増える。
指示は届く。 でも、信は届いていない。
この状態が続くと、 社長は自分の力を疑い始めます。
先代社長との関係や過去の力学が残っている
古参社員は、先代に雇われた人たちです。
先代とは、長い年月をかけて 人間関係ができあがっている。
恩もある。恨みもある。 どちらにせよ、濃い関係です。
しかし後継社長とは、 その関係がまだできていません。
古参社員から見れば、 後継社長は「途中から来た人」に見えやすい。
能力の問題ではありません。 立場の見え方として、そうなりやすいのです。
だから、社員の心の中にこんな声が動きます。
「なぜ、あなたの言うことを聞かないといけないの?」
古参社員との対立が、経営そのものを重たくしている
この状態を放置すると、 会社のスピードが落ちていきます。
決めたことが、途中で止まる。 悪い情報が上がってこない。 現場から提案が消える。
そして最後には、 社長が孤立します。
孤立した社長は、 判断を小さくします。
失敗の少ない選択を選ぶようになる。 挑戦が減る。会社が守りに入る。
だから「あの人さえいなければ」に 行き着いてしまうのです。
その気持ちは、責められるものではありません。
なぜ古参社員を辞めさせるだけでは、会社は変わらないのか

問題は「その社員」ではなく組織の構造にある
私は27歳のとき、 阪神大震災で家業のホテルが壊滅した状況で 経営を引き継ぎました。
父は気力を失い、 「あとはお前に任せる」と言って 業務を諦めてしまいました。
蓋を開けてみたら、 100億円を超える借金。 50億円の債務超過。
従業員400名の生活が、 突然、私の肩にのしかかりました。
当時の私は、とにかく必死に動きました。
専門家を招き、学び、手を打ち続けた。
でも、頑張れば頑張るほど 社員との距離ができて、孤立していきました。
あのころの私も、 心のどこかで思っていました。
「この人がいるから、うまくいかないのだ」
でも実際には、 特定の誰かが問題だったのではありません。
そこには「そう振る舞わせる構造」がありました。
構造が残っていれば、 一人辞めても、次の誰かが同じ位置に立ちます。
古参社員が強い会社で起きている力関係を見直す
古参社員が強く見える会社には、 共通点があります。
現場の情報を、その人が握っている。 取引先との関係を、その人が持っている。 会社の歴史を、その人が語れる。
つまり、実質的な力を持っている。
一方で、後継社長のほうはどうでしょうか。
株式は、まだ先代のもの。 お金の最終決裁は、会長か経理。 人事の権限も、会長のまま。
責任は社長、権限は会長。
この状態では、 古参社員が強いのではなく、 社長の側に力がないのです。
力関係とは、人柄の問題ではありません。
誰が何を握っているか、の問題です。
辞めてもらう前に、社長自身が握るべき実権とは
歴史を眺めていて、思うことがあります。
後を継いだ者が本当に力を持てたのは、 肩書きを受け取ったときではなく、 実権を握ったときでした。
家督を譲られただけの当主は、 たいてい家臣に振り回されています。
これは戦国の話ではなく、 いまの中小企業でも同じことが起きています。
だから、順番があります。
・人を動かす前に、 社長が実権を整える。
・株式を集めていく
・お金の最終決裁を自分に戻す
・銀行交渉の席に必ず同席する
・人事の判断を自分の手に置く
これは、誰かを疑って管理するためではありません。
社長が、最後の責任を引き受ける形を 整えるためです。
実権がないまま人を辞めさせると、 どうなるでしょうか。
恨みだけが残り、 力関係は何も変わりません。
そして残った社員が、こう思います。
「気に入らない人間は切られるのだ」
そこから、会社の空気は冷えていきます。
ここまでは、経営軸の話です。
会社という器を、 自分の手に取り戻す作業です。
この器が整ってはじめて、 「自分は何をやりたいのか」という 事業軸の話ができるようになります。
古参社員を敵にせず、社長の味方に変えていく方法

相手を変えようとする前に信頼関係をつくる
順番を、逆にします。
私も当時、思い込んでいました。
実績さえ出せば、あの人たちは黙る。 数字を出せば、認めてもらえる。
でも、いくら手を打っても届きませんでした。
いま振り返ると、当たり前でした。
本当の実績は、 社員の協力があってはじめて出るものだからです。
実績を出せばついてくる、と思っている。 でも実績を出すには、 先に協力してもらわないといけない。
この矛盾を抱えたまま、 私は力でねじ伏せようとしていました。
そんなとき、ある経営者から言われました。
「お前はバカ息子なんだから、肩肘を張らず社員にお願いしろ」
その言葉で、 自分が立派な社長を演じようとしていたことに はじめて気づきました。
そこで、社員リーダー約50人を集めた場で 頭を下げました。
「自分はバカ息子で、ひとりでは何もできない。 でも会社を良くしたいので、力を貸してほしい」
会場は凍りつきました。 誰も反応しませんでした。
でも、そこから私は 自分の肩の力が抜けたのを感じました。
そして少しずつ、 社員が協力してくれるようになったのです。
やり方を変えたわけではありません。 自分の中の認識が変わっただけでした。
社員が自然と社長の意思に協力する状態をつくる
私はこれを「契り結び」と呼んでいます。
重い儀式のことではありません。
社員一人ひとりと、 これからの関係の前提を結び直す行為です。
一対一で、15分から30分。 パートの方も含めて、全員と行います。
流れは、こうです。
・感謝を伝える
・考えていること、悩んでいることを聴く
・社長になった経緯を短く伝える
・「協力していただけますか?」と尋ねる
・反応を見て、さらに聴く
・自分の考えを述べながら対話を往復する
・「協力します」に「ありがとうございます」と返す
とくに大事なのは、 「協力していただけますか?」と 質問の形で投げることです。
「協力してください」と押し付けない。
そして反応を受けて、もう一度聴く。
この順番があるだけで、 場の空気が変わります。
契り結びをしたからといって、 急に仲良くなるわけではありません。
でも、会社が前に進む前提が揃い始めます。
様子見から、参加へ。 牽制から、協力へ。
現場では、報連相が戻り、 決めたことが止まらなくなり、 小さな提案が出はじめます。
「辞めさせる」から「会社を自分の庭にする」へ視点を変える
ここで、コードを入れ替えます。
コード:あの社員を辞めさせれば、会社は変わる。
リ・コード:関係の前提を結び直せば、会社は動き出す。
私はこの書き換えを「リ・コード」と呼んでいます。
古いコードを解体して、 新しいコードへ書き換えること。
「辞めさせる方法」を探しているとき、 社長の意識は会社の外側に向いています。
でも「自分の庭にする」と決めた瞬間、 意識が内側に戻ってきます。
庭は、抜くだけでは育ちません。
土を耕し、水をやり、 何を植えるかを決める人がいて、 はじめて景色が変わります。
古参社員との関係を乗り越えた先に、後継社長の経営が始まる

ここまで整うと、 会社の動き方が変わり始めます。
自分の言葉と判断軸で会社を動かせるようになる
経営計画書には、 売上、利益、施策、期限が書かれます。
大切な文書です。
でも、そこには書かれにくいものがあります。
この会社をどういう思いで引き受けるのか。 何を守り、何を変えたいのか。 苦しくなったとき、何を残し、何を捨てるのか。
人は、方針や目標だけでは 自分の仕事を本気では預けません。
「この人は何を信じているのか」
そこが見えて、はじめて腹が動きます。
自分の言葉で核を語れるようになったとき、 古参社員の目つきが変わる瞬間があります。
私は、それを何度も見てきました。
古い会社を守るだけでなく、新しい事業を生み出す
そしてもう一つ、変化が起きます。
守るだけの経営から、 自分の憧れに向かう事業へと 関心が移っていくのです。
先代が積み上げてきた取引先、社員、地域の信頼。
ゼロからつくれば 何十年もかかる資産です。
その資産の上に、 自分の構想を重ねていく。
このとき、古参社員は 邪魔者ではなくなっています。
長く現場を見てきた人の目が、 構想を実現するときに効いてくるからです。
「二代目だから」ではなく「自分だから」と言える社長になる
私は、継ぐ意識を卒業して 自分の憧れを形にしていく人を 「後継事業家」と呼んでいます。
会社を引き継いだ事実は変わりません。
でも、その会社を使って 何を実現するのかは、自分で選べます。
親が会社をやっていることは、宿命です。
しかし、継いだ後どうするかは、 自分が選ぶ運命です。
そこが分かれたとき、 「二代目だから」という言い訳も、 「二代目なのに」という引け目も、 静かに消えていきます。
ある製造業の後継社長は、 就任当初、工場長との関係に苦しんでいました。
会議で腕を組み、 何を提案しても「前はこうやってました」と返す。
正直、辞めてほしいと思っていたそうです。
その方が、契り結びを全社員に行いました。
工場長との面談は、 最初の20分、ほとんど沈黙だったといいます。
いまはどうなっているか。
会議で真っ先に手を挙げるのは、その工場長です。
新しい設備の話になると、 社長より先に若手を集めて段取りを組んでいる。
先日お会いしたとき、社長がこう言いました。
「あの人がいなかったら、今の会社はないです」
特別な人にだけ起きることではありません。
問題は、その社員ではなかった。 社長が、実権を握っていなかった。 関係の前提が、結び直されていなかった。
それだけのことでした。
あなたの会社の古参社員は、 本当に敵なのでしょうか。
その人が味方に回ったとき、 会社にどんな景色が生まれるのか。
想像するだけでも、 経営は少し面白くなってくるはずです。



